正しい漢字の書き順って意味あるの?美文字と書き順の関係を解説します

正しい漢字の書き順って意味あるの?美文字と書き順の関係を解説します
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こんにちは、書道家で筆耕士の清水克信です。

先日テレビのクイズ番組を見ていたら『漢字の書き順(筆順)』の問題が出されていました。番組内では『飛・何・田・円・冊』等で回答者が頭を悩ませていました。

そもそも、文字は人に意志を伝えるツールです。ツールなので形さえ間違っていなければ良いような気もしますが、正しい漢字の書き順って意味あるのでしょうか?

今回は、書道家の視点から美文字と書き順の関係を解説していきます。

目次

代表的な漢字の書き順の例

まずは、先日見たテレビのクイズ番組で実際に出題された漢字の書き順を確認してみましょう。

※漢字『飛』の書き順

※漢字『飛』の書き順

いきなり難易度の高い『飛』の書き順です。『飛』は鳥が飛ぶ様子を表した象形文字から進化した漢字で、部首はそのまま『飛』です。単独に進化した文字なので同系統の文字は他にありません。

小学4年生で学ぶ漢字ですが、少し特殊な漢字ということになります。そのために『飛』の書き順も独特となっています。

『飛』の書き順のポイントは何といっても④画目です。何故、④画目が縦画なのか?これは行書とも共通しているのですが、古来からの書き方に倣っています。

この④画目が文字全体の中心線に沿って下に長めに書く事で大黒柱の役目をはたしています。この順番で書かないと、シッカリした大黒柱にはならないのです。

『飛』にとっては、美文字で書く為に正しい筆順が必要になるということです。

※漢字『何』の書き順

※漢字『何』の書き順

小学2年生で習う漢字『何』は『人偏+可』で成り立つ漢字です。ポイントは『可』の書き順で、横画の次は『口』を書きます。

※漢字『田』の書き順

※漢字『田』の書き順

とても基本的な漢字の『田』ですが、『十』の部分に注意が必要です。普通に書けば『縦⇒横』で正解です。日本ではそのように書く事をおすすめします。

しかし『横⇒縦』も間違いとは言い切れません。実は台湾では『横⇒縦』で教えているようです。この理由は、元になった古典の違いです。

日本でも、台湾の『田』の元になった古典を学んでいる書道家さんは、『横⇒縦』で書いたりしています。

※漢字『円』の書き順

※漢字『円』の書き順

小学1年で習う『円』。みんな大好きな日本のお金の通貨単位ですが、『どうがまえ⇒縦⇒横』となります。

※漢字『冊』の書き順

※漢字『冊』の書き順

小学6年で習う漢字『冊』は、木を縛り連ねた古代の書物『木簡・竹簡』を表す象形文字から進化しました。

書き順のポイントは『貫く横画』をいつ書くかです。正解は最後に横画なのですが、貫く横画はだいたい最後に書くものと覚えておくと良いでしょう。

母・舟・再なども貫く横画は最後に書きます。

漢字の書き順の原則

こうしてみていくと、「書き順って複雑で難しい」と思っても仕方がありません。また「全ての漢字の書き順を覚える必要があるの?」そのように不安に思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。

『書き順は左上から右下へ向かう』という原則があります。

ほとんどの漢字はこの原則で成り立っています。紹介してきた漢字のように注意すべき点はありますが、『書き順は左上から右下へ向かう』を守って書いていれば大きな間違いにはなりません。

また、特殊な書き順の漢字もありますが、決して数は多くありません。後日ご紹介できたらと考えています。

書き順の成り立ち

漢字の書き順は明治時代に学校教育が始まる際に統一されました。つまり、江戸時代までは書く人によってバラバラだったということです。

しかし、この江戸時代ですが、楷書は公文書にしか使用されておらず、一般人は行書・草書を使用していました。ほとんどの一般人は楷書を読むこともできなかったそうです。※現代の逆ですね。

ちなみに江戸時代の江戸都市部の識字率は80%を超えていました。中世の先進国であるイギリスの識字率が5%以下だった時代にです。そりゃ、日本を植民地になんかできるわけがありません。

さて、そんな明治時代に統一された楷書の書き順ですが、大陸の唐王朝時代の楷書をベースに『美しく書くこと』と『行書の書き順』を考慮して考えだされました。

正確に言うと考えだされたというよりも、昔から書かれていた書き順を解明したということでしょう。

美文字と書き順の関係

ここで美文字と書き順の関係について考えてみます。

冒頭でも言いましたが、文字は人に意志を伝えるツールです。それなら相手に意志が伝われば正しい書き順の必要はあるのでしょうか?

まず、僕の考えで言うと『必ずしも書き順は正しくなくてもいい』です。ただし、ここで問題が起こります。それは、正しい書き順で書かないと、理想的な字形にはならないということです。

例えば、前述した『飛』を挙げてみます。

※正しい筆順で書いた『飛』と美文字のポイント

※正しい筆順で書いた『飛』と美文字のポイント

美文字のポイントも載せておきましたが、不思議なことに『飛』は正しい書き順で書かないとカッコイイ形にはなりません。

これは実際に試してみるとよくわかります。正しい書き順が美しい字形になり易いように作られているのです。

あまり神経質になる必要もありませんが、美文字で書く為には正しい書き順で書く必要がある事だけ知っておいて下さい。

行書を見れば書き順がわかる

文部科学省でまとめている書き順はお手本にしている古典に倣って決められています。また、古典では判別が難しい漢字は行書の書き方も参考にしています。

例えば、『飛・何・田・円・冊』のそれぞれの行書を見てみましょう。

※『飛・何・田・円・冊』の行書の作例

※『飛・何・田・円・冊』の行書の作例

線を繋げたり、点画を省略することもありますが、基本的に筆の流れは楷書と同じだということがわかります。

文字は意志を伝えるツールなので、形が間違っていなければ良いとは思います。しかし、漢字は書くだけでそこに『美』が生まれます。そんな『美』をまとった文字を、最近は『美文字』と呼んでいます。

書き順は『美文字』にするための重要な手段の一つです。神経質になる必要はありませんが、少し意識してみてください。数か月~1年であなたの文字は『美』に変わっていくことでしょう。

最近は、簡単に書き順を調べることができるスマホアプリがたくさんあるので便利ですよ!

楽しみながらお試し下さい。

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